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ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)

新書
堤 未果
岩波書店
価格:¥ 735
平均評価:評価:4.5
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「ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)」購入者のレビュー・評価

  大変良い(評価:評価:5
本書は現在アメリカが抱える諸問題について多々言及しており、これらの殆どがアメリカが抱える自由の結果であり、その諸問題のいくつかをアメリカが日本に輸入したいと考えているが、著者がそれに対し明言はしていないが批判的な意見を述べている点で非常に面白いです。具体的には、サブプライムローン、医療に対する競争の導入、貧困地域の高校生に対する軍事的なリクルート等の問題が扱われています。お勧めの1冊です。
この評価・レビューへの支持:投票総数 1件中 1票の支持
 
  「貧困」が経済システムに組み込まれてしまった国(評価:評価:4
大金持ちと貧困が同居する先進国、そういったら言いすぎだろうか....、でも残念ながらアメリカの真実です。 日本のメディアではアメリカの国内問題の実態がなかなか報道されない様ですが、この本は、その実態が簡潔に纏められています。
 プロローグでサブプライム問題から話が始まっています。 ”サブプライム問題は単なる金融の話ではなく、過剰な市場原理が経済的「弱者」を食い物にした「貧困ビジネス」の一つだ。” 裕福層・中間層に対する住宅ローンが一巡し借り手がいなくなったんので通常ローンを借りれない貧困層をターゲットしローンを組ませ債権は証券化して転売して資金を早期に回収してしまう。 あとで、借り手がローンを返済できなくなっても貸し手は痛くもかゆくもない。 利益の極大化が良しとされるアングロサクソン資本主義の行き着く先が「暴走型市場原理システム」そこでは弱者が食い物にされ、人間らしく生きるための生存権を奪われた挙句、使い捨てにされていく。
 一章では、貧困と肥満の関係を取り上げる。 貧困層にたいする福祉、学校給食等がファーストフード産業に巨大マーケットとしてビジネスの対象にされる、そこではコストを下げた所謂ジャンクフードが提供される。 カロリーは高いが栄養価は乏しい。 結果、肥満するが体はボロボロになっていく。
 二章では、民営化と自由化が個人の職場を奪い収入の手段失った方々が経済難民化していく姿を追う。 規制が別の見方でみれば保護になっている場合もあるということ。
 三章では、医療問題、社会保険制度が充実していないため全て個人の自己責任とされてしまう。 個人向け医療保険にも保険会社の利益至上主義が露骨なまでに影響されている。 医療現場でも病院の株式会社化で利益至上主義が蔓延る現実がルポされる。
 四章では、貧困層の若者たちが戦場に送る兵士としてリクルートされていく現実がルポされている。 組織的に貧困に追い込み兵士等で戦場に行くしか生きられない様に仕向けられている。
 五章では、戦場が民営化されていく現実、世界の貧困層がそのビジネスを支えている現実がルポされている。
この評価・レビューへの支持:投票総数 2件中 2票の支持
 
  アメリカを嘲笑していられるのは今の内だけ、成長率も起業率も日本が劣る(評価:評価:3
貴重な指摘が多いが、本書は全体として巧みなプロパガンダ(政治的宣伝)である。著者の誘導に軽々しく乗っかって米国を嘲笑する向きが多いのは日本社会にとって危険極まりない。

これだけ富の格差が絶望的に大きく、医療に問題を抱えているにも関わらずアメリカの成長率は日本よりも高く、移民の流入によって人口も増え続けている。労働力人口の減少に全く危機感のないどこかの島国よりも遥かに将来性があるのだ。

本書は悲惨な貧困層だけに目を向けることによって、アメリカが巧みに最良の資質を持つ意欲的な人材を世界中から集めている事実を隠蔽しようとしている。アジアのトップ層の優秀な学生は大挙してアメリカの大学を目指し、西海岸ではインド系の多くの技術者や経営者が活躍している。また、起業の容易さとチャレンジを容認・評価する文化は我々の遠く及ぶところではない。こうした事情の紹介では小林由美女史の著作の方が遥かに勝っている。
超・格差社会アメリカの真実

90年代前半のアメリカでの暴動を見て多くの日本人が超大国の斜陽を哀れんでいたが、その後の数年であっと言う間に形勢逆転し、塗炭の苦しみを味わったのは我らが日本であったことを忘れてはならない。

アメリカにはこの貧困の解決に向けて果敢な挑戦を行っている個人や団体(例:コモングラウンド)も数多く、社会貢献の意識と活動の面でも日本は劣勢である。未成年も貧困層支援などボランティアを行うのが当たり前の社会なのだから。この分野に関してはロバート・フランク『ザ・ニューリッチ』と駒崎弘樹『「社会を変える」を仕事にする』が非常に参考になる。
ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態
「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方

アメリカの窮状をいかに嬉々と論じても我々の社会が改善される訳ではないのは明らかであり、我々はアイルランドやイギリスの成長政策から学び、北欧やフランスの再配分政策を真剣に研究しなければならない。経済成長なくして社会保障制度の維持が不可能であることは自明の理である。
資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453)) (集英社新書 (0453))
この評価・レビューへの支持:投票総数 20件中 12票の支持
 
  憲法9条を変えたい?(評価:評価:5
 憲法9条を変えたいと思う人は多い。
 しかし本書を読めば「本当にそんなこと言っていいのかね?」という気にきっとなる。
 アメリカの富裕層、タカ派、軍産複合体、アメリカのマスコミは(他国を巻き込んで)戦争をしたがっている。
 儲かるから・・・。
 しかし、彼らは直接戦地では戦わない。
 
 戦いに狩り出され、現地の罪もない「普通の人」を殺し、「普通の人」の目玉をくり抜くのは、これも普通のアメリカ人なのである。


 普通のアメリカ人。一般人。つまり奨学金のほしい「普通の学生」、子供を育てている「普通の父親」。
 彼らは、税金の高騰、学費の高騰、食費の高騰、石油の高騰によって簡単に操作され、貧困に追い詰められ、まともな仕事といえば軍関連しかなくなり(詐欺、嘘なのだが)、軍に狩り出される。結果、そうした作業に従事させられた「普通の人」は心のキズを負って帰国して、「普通の仕事」につけなくなって、路上生活をさせられ死んでゆく。国のために戦った愛国者は、帰国して路上で厳寒の中、精神を病み、誰にも見取られず、孤独に死んでゆくのである。

 しかし、軍人にもなれない人も出る。
 ここが重要である。

 彼らは派遣社員になる。
 普通のハケン会社に登録するだけである。
 派遣社員、彼らはもちろん軍人ではない。
 しかし、銃弾飛び交う戦地へ行かされるのである。
 その扱いは現地軍人の「奴隷」である。靴も支給されない、砂漠で水も支給されない。
 劣化ウラン弾に汚れた水を飲んでも、保障もない。
 現地で死んでも、会社の事故で済まされてしまう。そんな派遣社員である。

 今、日本で派遣社員。フリーター、非正規労働者が増えたのは、かなり作為的、意図的なのだが、結果どうなるか・・・本書からはリアルに分かる。
 それはそれは恐ろしい「SF並の現実」である。
 
 
この評価・レビューへの支持:投票総数 7件中 6票の支持
 
  今日本で進行しつつある民営化と進む格差などの現象が重ね合わされてしまう(評価:評価:4
 本書で紹介されているのは、貧困下が進むアメリカで起こっている事実と、それを利用しようとする企業と政府の現実である。

 本書によれば、学校給食に食い込むフードビジネスが、マクドナルドやピザハットなどのファストフードであるため、貧困層の多い公立学校では約半分の子供が肥満児になっている。また、ハリケーンカトリーナの被害を受けたニューオーリンズ地区の住民に対して政府が出した救済策は、とうてい無理に決まっている貧困層に対する政府の土地の払い下げである。このため、富裕層が土地を買って、貯水池や高級コンドミニアムになってきているという。さらに、高額な医療費のために無保険者が5000万人近くに増大し、一方で病院にも市場原理主義が進んでコスト削減が進み、医療過誤も急増しているという。

 このような現実をいくつも示した上で、著者がもっとも力を入れているのがイラク戦争に関する部分である。大学に通えない貧困層に奨学金が出るといって食い込む米軍のリクルーター。戦争ビジネスとしてチェイニー副大統領がCEOをしていたハリバートン社に見られるような派遣会社が世界中に網を巡らして、貧困国からイラクに労働者を送り込んでいるという現実。

 富裕層と貧困層という二極化が進行している中で、これを民営化を進める政府が戦争に活用しているという、市場原理主義が行き着くところまで行ってしまったアメリカ。
 ここに、今日本で進行しつつある民営化と進む格差などの現象が重ね合わされてしまう。

エピローグで「消費をやめましょう」とクリスマスシーズンにマンハッタンの玩具店の前で叫ぶ教会の牧師を紹介している。
このメッセージが、これからの世界経済への一つの回答を示しているように思えてならない。

この評価・レビューへの支持:投票総数 5件中 5票の支持